このごろ乾燥肌、敏感肌に悩む人が驚くほどふえています。乾燥しやすい、シワになる、保湿を高める化粧品はないかと、目先の保湿を探し回っているという状況です。しかし即効性をアピールしている保湿化粧品ほど、瞬間的によくても肌に良くないものが多いのです。ではいろいろ試してみて、なかなか正解がみつからないとき、どうするのが良いのでしょうか。
まず、乾燥の原因がなにかをしっかり把握することです。その上で対策を考えるのが順序となります。
ひとつには皮ふがうすくなって、水分を貯める能力が落ちていることです。するとシワやシミができやすくなります。どうしてそうなってしまったのか、その原因をつかみ、肌の働きを本来の姿にもどさなければ、根本的な解決にはなりません。表皮の厚みはわずか0.2ミリほどしかないとても薄いものだからです。
原因のひとつに、化粧品に含まれる合成界面活性剤の作用があります。皮ふの構造は、そもそも外部から水や脂を皮ふの中に浸透させないように、ガード機能をそなえています。そのままだと化粧品の有効成分が肌に入っていかないため、浸透型の化粧品ではガード機能をこわしています。それに使われるのが台所洗剤に代表される合成合成界面活性剤です。合成界面活性剤は肌なじみがよく、保湿に即効性があるうえ、原価も安く、化粧品メーカーにとってはとても好都合な原料です。消費者もそのような効果を化粧品に期待しているからです。いまや合成界面活性剤は数百種類もあって、いろいろな作用をもたせられるため、さまざまな用途に乱用されています。
問題はガード機能がうしなわれると、肌が無防備状態になることです。すると肌の水分は蒸発しやすくなり、外部のアレルギー物質も容易に肌に侵入してしまいます。これを防ぐために配合される合成ポリマーにも問題があります。それは肌の表面にうすいビニールの膜をつくり、水分の蒸発を防ぐのですが、皮脂腺がふさがれてしまい、皮脂の正常な分泌ができなくなります。すると28日+年齢の日数とされる皮ふの細胞が入れ替わるターンオーバーが乱れて、未成熟な皮ふができ、肌じたいの保水能力が落ちてしまうのです。これが乾燥肌をつくりだす大きな原因です。ガード機能が失われると、乾燥だけでなく、アレルギー物質が侵入して敏感肌や肌トラブルを生じやすくなります。
ここで知っておきたいのが、肌を守ってくれる常在菌のはたらきです。健康な肌には、無数の微生物が住んでいることをご存じでしょうか。この微生物は皮ふに天然のクリームを生成し、皮脂と汗を脂肪酸にかえて皮ふを弱酸性にたもち、アルカリ性を好む悪玉菌の繁殖を抑えているのです。これが表皮常在菌とよばれる肌の先住人で、1センチ四方に20万個ほど存在するといわれています。細菌ときくと不潔に感じやすいですが、この常在菌は皮ふを健康にたもつためにとても重要な役目をしています。ノーベル生理学賞を受賞者した大村智さんは、記念講演で「微生物は私たちの望みをかなえてくれる無限の可能性を秘めている」と述べています。皮ふにトラブルをもつ人の多くは、この常在菌をないがしろにして菌バランスを崩し、悪玉菌の増殖を招いているといわれています。
常在菌はケミカル成分にとても弱いので、化粧品の成分のほか、合成シャンプーや洗顔料でも死滅したりはがれ落ちてしまいます。常在菌を大切にするには、合成界面活性剤や化学合成成分を含まない化粧品を選ぶことが大事です。真正なオーガニック化粧品であれば、常在菌を損なわない健康な肌を育てることができます。