皮ふは体内最大の臓器
空気のように当たり前の皮ふですが、ひとたび傷つくとさまざまな不具合が生じます。皮ふは人体で最大の臓器といわれています。人間は皮ふがなければ生きていくことができません。美肌のためにも皮ふの働きを知ることか大切です。皮ふは体重の16%を占め、面積は毛穴や汗管なども含めると25㎡にもなるといわれています。なかでも大きい機能は、バリア機能と免疫機能です。外界の有害なウイルス、細菌、病原体やアレルギー物質などの異物の侵入を防ぎ、さらに紫外線の害から肌を守ってくれています。
角質層は強力な防護壁
皮ふは皮下組織、真皮、表皮の三層からなり、バリアで重要な機能を果たす表皮は最も外側にあります。表皮の細胞は基底層で生まれ、分裂増殖しながら、有棘層、顆粒層、角質層へと成長して体表面へと押し出されます。この期間がおよそ28日間のターンオーバーといわれ、最後は垢になって脱落します。このうち角層に留まる期間が半分の14日間を占めます。角質細胞は核を失った生物学的には死んだ細胞ですが、皮ふを守る強力な防護壁となります。その厚みは、サランラップ2枚を重ねたほどの0.02mmしかありません。皮ふは外界と接してつねに有害な病原菌や化学物質に晒されています。これを跳ねのけるために想像もできない強力なバリア機能を備えているのです。万一、有害物質の侵入を許してしまった場合でも、免疫機能がこれを排除する仕組みになっています。
角層のバリア機能
バリア機能には2つの重要な役割りがあります。一つは、外部からのウイルスや細菌、花粉やホコリ、大気汚染物質など異物の侵入を防ぐこと、二つ目は、肌内部の水分の蒸発を防ぐことです。この角層のバリア機能は、外来抗原のじつに90%をブロックすると考えられています。角質層はケラチンという繊維状の丈夫なタンパク質でできていますが、水分を豊富に含んだみずみずしいものです。これは角層細胞の中にある天然保湿因子(NMF)の働きによります。NMFが不足すると、肌は乾燥やカサつきを生じます。NMFを上手に補うには、その大部分を占める「アミノ酸」と「ミネラル」を含んだスキンケアを選ぶことです。白樺樹液はこれらの成分をバランスよく含んでいます。セラミドを多く含む食品には、大豆や小麦、ほうれん草、ヨーグルト、米、牛乳などがあります。
病原体を撃退するランゲルハンス細胞
表皮にはバリア機能を果たすランゲルハンス細胞が存在します。ランゲルハンス細胞は、1㎜平方メートル当りに1000個もあって、細かい突起を張り巡らせて病原菌やウイルスなどの外敵の侵入を監視しています。異物を認識すると免疫機能が発動し、外界から侵入する病原体を撃退します。また有害な紫外線から身を守るメラニンを産生する色素細胞があります。表皮にはこの他にも驚異的な数々の重要な機能が備わっています。
皮脂膜は最初のバリア
皮脂腺から分泌される皮脂の40%は中性脂肪のトリグリセリドです。皮脂は皮ふの表面に住んでいる常在菌がつくり出す酵素によって、脂肪酸とグリセリンに分解されます。脂肪酸は弱酸性なので、アルカリを好む細菌やウイルスにとって最初のバリアとなります。この皮脂膜が薄くなると保湿効果が弱まり、皮ふはカサカサになります。スキンケアで常在菌を大切にする化粧品の必要がお分かりいただけると思います。また洗顔などで皮脂が必要以上に除去されないように、洗顔のこすり過ぎには注意する必要があります。
角質細胞間脂質の働き
表皮の角質細胞は核を失って死んだ細胞ですが、水分を豊富に含んでみずみずしいものです。これは角質細胞の間を埋めている角質細胞間脂質の働きがあるからです。角質をレンガの壁に例えると、角質細胞はレンガで、角質細胞間脂質はその間を埋めるモルタルに相当します。角質細胞間脂質は主にセラミドという脂質でできており、セラミドが不足すると皮ふが乾燥してバリア機能の低下を招き、敏感肌になります。化粧水で肌の乾燥を防ぐのはこのためです。
表皮細胞の構造
皮ふは免疫器官でもある
角質層は、外傷やひっかき傷などによってバリアが壊されると、そこから容易に細菌やアレルギー物質が侵入してしまいます。そこで皮ふの中には、二重、三重の防御の仕組みが備わっています。免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は人間が生まれたときから備わっているもので、未知の病原体や異物であっても数分から数時間でこれを特定し排除します。一方の獲得免疫は、実際に感染したり、ワクチン接種によって後天的に獲得した免疫です。自然免疫は幅広い病原体に対応しますが、獲得免疫はある特定の病原体に対応します。自然免疫はやや弱めで感染拡大が収まらない場合は、少し遅れて獲得免疫が対応するという二段構えになっています。
美肌を守るために
肌荒れの大きな原因はバリア機能の低下です。美肌はただ放置しておけば維持できるものではありません。肌を清潔にし、保湿することの両方が大切です。バリア機能が低下すると、肌の水分が蒸発し、紫外線などの外部刺激を受けやすくなります。肌の乾燥を防ぎ、水分と油分のバランスが整った状態をキープする必要があります。 それには肌に十分なうるおいを与えることです。オーガニックな天然成分でのスキンケアで、化粧水、美容液、クリームの順で保湿しましょう。紫外線やマスクの擦れ・蒸れ、空調、花粉などの外的刺激を避け、睡眠不足やストレス、季節の変わり目による気温や湿度の変動などに気をつけて、肌のコンディションを保つことが大事です。