広告を信じて選ぶ化粧品
「天然成分は肌に優しい」といえば、ほとんどの人は共感するでしょう。でも優しいとは、具体的にどういうことか、天然成分とケミカル成分はどう違うのか、ちゃんと理解できている人は多くないように感じます。このため実際の化粧品選びになると、広告に謳われている文言を信じて選んでしまうことになります。いま世の中にある化粧品のほとんどには、合成成分が配合されています。それがやがてシミやしわ、乾燥肌や敏感肌、酒さなどといった肌トラブルになり、悩まされることになります。エイジングケアに効果的な化粧品はないかと探しまわり、コスメジプシーに陥り、しだいに出口が見えなくなっていきます。皮膚科に駆け込んでも思うように改善せず、処方された薬でさらに悪化するといった悲劇を経験する人も少なくないのです。こんな状態になってしまったら、どうやって脱却すればよいのでしょうか。
自然治癒力とホメオスタシス
人間の身体には自然治癒力というものが備わっています。ケガをしても包帯を巻いておけば1週間もすると自然に治って元通りの皮ふになります。これが自然治癒力です。また眠っているときも呼吸や脈拍は一定に保たれています。真冬の寒いときも、真夏の焼けるような暑さでも、体温は一定に保たれています。これは体内の条件を一定に保とうとするホメオスタシスと呼ばれる機能が働いているためです。食中毒を起こすと嘔吐や下痢をしますが、これは体が異常を感知して害になるものを排出しようとする反応です。同じように、身体にとって有害な物が肌に侵入しようとすると、これを異物と判断して排除する仕組みが働きます。これが表皮のバリア機能です。
成分はヒトの皮脂に近いほど安全
肌は化粧品に対しても同じように反応します。人間の肌の成分と程遠い合成成分が肌に入り込もうとすると、肌はそれを異物と認識して排除しようとします。それが刺激やかゆみとなって現れるアレルギー反応です。ところが自分の皮脂に対してこのような反応が起こることはほぼありません。異物ではないからです。つまり皮脂に限りなく近い成分ほど、肌にしっくりなじむのです。市販のファンデーションが長時間のうちにマーブル状によれるのは、そこに含まれる合成ポリマーが皮脂になじまず分離してしまうためです。しかし天然成分のファンデーションであれば、人間の汗や皮脂になじみやすく、よれたりすることはありません。合成成分より植物由来の成分、植物より動物由来の成分、さらに人の皮脂の成分に近くなるほど、肌になじみ刺激にもならないのです。
現代の化粧品は人体実験
やさしい化粧品としてのオーガニックや天然成分にこだわる理由は、人間が自然の一部である生き物であることです。自然の一部であるかぎり、自然の中にあるものこそ本当の美を引き出せて、また長い歴史の中で使われつづけてきたこと自体が安全の証明になります。現代の化粧品に使われる美容成分の進歩には著しいものがありますが、その安全性は短期間のテストだけで市場に出ていきます。10年、20年単位のテストは現実問題としてできないのです。しかし化粧品は女性の顔に長く使われるものなので、長いテスト期間は女性の生身の皮ふにつけて、いわば人体実験が行われているのです。それを5年、10年と長期間使用したとき、乾燥肌や敏感肌といった肌トラブルが多発する原因になっています。ここから脱出するには、肌が異物と認識しない、天然成分100%の化粧品に切り替えることが大事です。
魔法のような即効性に要注意
メリットの裏には必ず半面のリスクがあります。しかし化粧品の宣伝では、よいことずくめのプラス面ばかりで、リスクに触れることはほとんどありません。小さな文字で、「万一お肌に合わないときは使用をおやめください」などと書かれているだけです。肌の細胞が入れ替わるターンオーバーは、年齢によって1ヵ月から2ヵ月ほどかかります。つまり素肌が1日で変化したり、1週間で瑞々しい白い肌になったりするのは、そもそもおかしいのです。何らかの魔術がなければ、肌が即効的に変化することはあり得ません。
素肌は即効では変化しない
ヒトの成分のヒト幹細胞化粧品
天然成分100%の化粧品は、瞬時に変化こそしませんが、肌の自然治癒力を高めて、素肌自体が瑞々しく美しく輝くように導いてくれます。効果はゆっくりでも、肌本来の自然に備わった機能を高めることが、本当の意味の美容であり、エイジングケアになります。最近はオーガニック化粧品を超えるものとして、さらに人間それ自体の成分であるヒト幹細胞培養液が注目されています。ヒト幹細胞培養液は、バイオ医療の産物として登場し、化粧品に革命をもたらす次世代の成分といえます。ただ、そのほとんどの商品には合成成分が多用されており、肌の弱い人には悪化要因になります。話題のヒト幹細胞培養液の化粧品だからと飛びつくのでなく、配合されている成分をよく吟味し、なるべくシンプルな成分構成で、配合濃度の高いものを選ぶことが大事です。