紫外線予防で注意したいこと
紫外線が厳しくふりそそぐ季節を迎えました。紫外線による日焼け対策や皮ふがんのリスクを抑えるためには日焼け止めが欠かせないのですが、日焼け止めには思わぬリスクが潜んでいることもあります。紫外線と日焼け止めの特徴や効果をよく理解して使用することが大事です。また新型コロナの感染予防でマスクが手放せないなか、うっかりするととんでもない結果を招きかねません。紫外線対策には正しい知識のもと、適切に対処する必要があります。
紫外線の種類と肌への影響
紫外線にはUV-A、UV-B、UV-Cの3種類があります。このうちUV-Cはオゾン層で吸収されて地上には届かないので問題ありません。地上に届く紫外線の9割はUV-Aが占め、UV-Aを浴びると急激ではないものの肌ダメージはゆるやかすすみ、表皮深く真皮層にまで達して、数日後には肌が黒くなり、線維芽細胞のコラーゲンやエラスチンを傷つけ、肌のハリと弾力を失わせて、シワやたるみを引き起こします。他方、UV-Bは日焼けや赤い炎症を引き起こし、メラニン色素の生成を促すため、沈着するとシミやくすみの原因になります。目立つのはUV-B波ですが、より手ごわいのはUV-A波であり、ガラスも透過します。UV-B波が強まるのは4月から9月にかけての夏場が中心ですが、冬のスキー場で雪焼けするように、曇天でもふりそそいでいます。また、UV-A波は冬でも強くふりそそぐため、年間をつうじて注意が必要になります。
日焼け止めのSPF値とPA値
日焼け止めの効果は、UV-B波ではSPF値、UV-A波ではPA値で表されます。UV-A波に対応するPA値は、PA++、PA+++等、+が4つまでの数で表され、+が多いほど効果も大きくなります。一方、SPF値は最大50まであり、数値が多い方が効果も長持ちしますが、効果の大きさを示すものではありません。SPF値の1は、紫外線に当たりはじめてから日焼けが始まるまでの時間をあらわす数値で、1は約20分間に相当します。SPF20であれば、20×20分=400分、つまり6時間程度はもちこたえられる計算です。数値が大きいほど肌に与える負担は大きくなるので、あまり数値の大きくない20~30位のものを選び、4、5時間ごとに付け足す使い方がより安全な使い方といえます。
紫外線吸収剤と紫外線散乱剤
日焼け止めには、紫外線吸収剤を使用したものと、紫外線散乱剤のものとがあります。紫外線吸収剤は、肌に侵入してきた紫外線を化学的に熱などに変換して放出するもので、SPF値50など数値の大きいものをつくることができますが、肌への負担は大きくなるので、敏感肌などの人にはおすすめできません。紫外線吸収剤には、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ㇸキシル、ラウレス硫酸ナトリウム、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸などが使われます。SPFやPA値の大きい日焼け止めでウォータープルーフタイプのものは効果が高いのですが、普通のクレンジングでは落ちにくいので肌への負担が大きくなります。これに対して紫外線散乱剤は、肌の表面で紫外線を反射させて肌の中に入れないようにするので、肌への負担は軽くなります。散乱剤には酸化チタンや酸化亜鉛などが使われます。単純にお肌の上で紫外線を跳ね返す成分なので、刺激が少なく、敏感肌・乾燥肌などの人には、紫外線散乱剤を使用した商品がおすすめです。酸化チタンは白浮きする欠点が指摘されますが、マリモ状に加工したマリモチタンであれば、光を乱反射させるので肌の凹凸を消し、かえって肌がきれいに見えます。また酸化亜鉛のように金属アレルギーを生じる心配もありません。
発がん性物質に注意
日焼け止めは日焼け対策と皮膚がんのリスクを抑えるために必要なものですが、市販されている78種類もの日焼け止めに、発がん物質の「ベンゼン」が含まれていることが、ある独立試験機関の調査で判明しています。ベンゼンは微量でもがんを引き起こす物質であることが明らかになっています。医薬品の製造において避けるべき溶媒に指定され、使用が避けられない場合でも濃度を2ppm以内にするように求められています。ところが、この基準を超えるものが4ブランド、14製品から検出され、2ppm以下のものでは64種類もの製品から検出されています。皮ふがんの予防のために使われる日焼け止めに、発がん物質が含まれているという事実は、皮肉というほかありません。ベンゼンを含まない安全な日焼け止めを選ぶことが大事です。
マスクと日焼け止めの盲点
いま新型コロナの感染予防でわたしたちは日常的にマスク生活を余儀なくされています。マスクをしているので、外出するときのお化粧や日焼け止めも、マスクでかくれている部分にはつけなくてもよいと考える人も少なくないようです。ただ日焼け止めに関していえば、マスクは紫外線に対してほとんど効果がないとされ、紫外線予防効果はわずか4%程度といわれています。マスクをしているからマスクの下には日焼け止めを塗らなくてもすむと安心していると、マスクを外したら日焼け止めの部分だけが白色で、マスクの部分はバッチリ日焼けしていたという悲劇を招きかねません。紫外線はマスクをしていても透過してしまうので、日焼け止めを塗るのであれば、まんべんなく塗ることが大事です。