そもそも保湿とは何か
肌が乾燥すると艶やかさや透明感がなくなり、バリア機能が低下して肌荒れや肌の老化を招きます。このため、乾燥から肌を守る保湿が欠かせませんが、保湿といえばすぐに思い浮かぶのが化粧水ではないでしょうか。しかし化粧水の水分はすぐに蒸発してしまうので保湿効果が高いとはいえません。本当の保湿とは、体の内側から角質に補給される水分が減らないように、つなぎとめる成分を肌に与えることです。保湿がうまくいかない場合の理由がここにあります。
化粧水では保湿力が不十分
健康な肌の角層には約20%の水分が含まれています。この水分量が何らかの理由で少なくなった状態を乾燥肌といいます。乾燥肌になると肌がかさついたりアレルギーを引き起こしやすく、つらい症状に悩まされることがあります。そこでいろいろ保湿ケアを試してみるものの、なかなか改善しないという話をよく耳にします。自分では正しい保湿ケアをしているつもりでも、じつは保湿の意味を取り違えていることが多いのです。化粧水をたっぷりつけても、すぐに水分が蒸発してしまうのはこのためです。また化粧水をつけ過ぎると、肌がなまけて内部から水分や皮脂分泌を怠るようになり、逆効果になることがあります。化粧水をした後に水分の蒸発を防ぐためにクリームでフタをする、という方法が推奨されるのも間違いではありませんが、真の保湿という意味では不十分なのです。
最強の保湿はセラミド
真の保湿とは、肌の水分をつかまえて蓄える働きをする、セラミドに代表される保湿成分を与えることです。すると体の中から湧き出る水分を表皮の角質につなぎとめて、蒸発を防いでくれます。セラミドは保湿の救世主と呼ばれ、セラミドがたっぷりある肌は乾燥することがありません。肌の水分を維持するのにもっとも貢献するのがセラミドなのです。セラミドにはいくつか種類があり、セラミド2、セラミド3、セラミド10などがあります。セラミドは角層の細胞と細胞のすき間を埋めている角質細胞間脂質の一種で、セラミドを失うと角層の水分量は80%も低下するといわれています。セラミドは水に溶けることなく水と結合してラメラ構造と呼ばれる層をつくります。ここに取り込まれた水分は、たとえ砂漠のような乾燥地帯で湿度がゼロになっても蒸発せず、肌を乾燥からしっかりまもってくれます。
保湿成分の種類と保湿力
セラミドは細胞間脂質の約40%占めており、保湿成分としては最強ですが、保湿成分はセラミド以外にもあります。大きく分けて、水分を挟み込むタイプ、水分を抱え込むタイプ、水分をつかむタイプの3種類があります。まず水分を挟み込むタイプの代表がセラミドであり、それより保湿力は弱くなるものの、細胞間脂質の一種にスフィンゴ脂質、ステアリン酸コレステロールがあります。大豆から抽出される水素添加大豆レシチンもはさみ込むタイプになります。抱え込むタイプでは、角質内で保湿成分として働くヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンがあります。これはいずれも本来は真皮にある物質で肌に弾力をもたらしますが、外から真皮には届かないので、角質内で保湿成分として働きます。ヒアルロン酸はゼリー状の物質で、水分を蓄える力が非常に強い性質があります。水分をつかむタイプでは、天然保湿因子(NMF)、PG(プロピレングリコール)があります。天然保湿因子は角質細胞内にある水溶性の成分で、保湿力はさほど強くないものの、サラッとして使用感がよく化粧水によく使われています。PGは多価アルコールで吸湿性にすぐれますが、保湿力はあまり高くありません。保湿力はなんといってもセラミドが最強です。保湿化粧品を選ぶなら、これらの成分が配合されている確かめて、美容液かクリームを選ぶことが大切です。
セラミドを生み出すヒト幹細胞化粧品
最近注目を集めているヒト幹細胞培養液を使った化粧品の保湿についてみてみましょう。ヒト幹細胞培養液は、幹細胞を培養するときに分泌される生理活性物質を多量に含んでいる、再生医療を応用した次世代の化粧品です。これを皮ふに与えると、加齢や紫外線で衰えてしまった自分の皮ふの幹細胞が再活性化され、再びヒアルロン酸、セラミド、エラスチンなどの保湿成分を生成するようになり、保湿効果はもとより肌の若返りにも大きな期待が寄せられています。ただヒト幹細胞培養液がどの程度配合されているか、配合濃度が影響します。3%以上配合されていることが望まれます。培養方法によっても浸出する生理活性物質に差が生じるため、化粧品専用のローリングボトル方式と呼ばれる培養方法のものが生理活性物質をふんだんに含みます。また培養液の安定性を保つために化学合成成分が多く含まれている商品もあるので、品質をよく確認することが求められます。
いずれにしても保湿とは化粧水をすることではなく、セラミドのような効果的な保湿成分を与えて肌の水分の蒸発を防いでつなぎとめることです。