除菌と発酵食品
新型コロナウィルスの出現で、スーパーにもレストランの入り口にも除菌ボトルが置かれ、薬局では除菌ウェットティッシュや殺菌剤が飛ぶように売れています。細菌類はいまや人類共通の敵になってしまったかのようです。ところがその一方で、菌や微生物の産物である納豆やヨーグルト、発酵食品などがスーパーで飛ぶように売れています。免疫力を高めて病原菌やウィルスから体を守るためです。いったい私たちは菌たちとどうつき合えよいのでしょうか。
3つの微生物のすがた
微生物と呼ぶものに、ウィルス類、細菌類、真菌類があります。じつはウィルスと細菌類とはまったく別物です。微生物にはいろいろな分類法があります。細菌はマイクロメートルで表され、光学顕微鏡で見ることができますが、ウィルスは超微小でその1000分の1の単位ナノメートルで表され、電子顕微鏡がなければみることができません。病原菌は体内に定着して細胞分裂しながら増殖し、人の細胞に侵入して毒素を出して病気をもたらしますが、ウィルスには細胞膜がなく、単独では増殖できず、人の細胞に潜り込んでタンパク質を栄養に増殖し、細胞を破壊します。ウィルスは自力で増殖できないので生物ではないとする学説があります。
微生物の大きさ比較
微生物の分類と働き
細菌にはブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、結核菌、コレラ菌、ボツリヌス菌などがあります。人から見たとき、有益な作用をもつ善玉菌、害をなす悪玉菌、平常時は中立でいて勢いに乗じてどちらにも加勢する日和見菌の3種類があります。この細菌にはそれぞれ役割があります。普段は概ね2:1:7の割合で存在し、バランスを保っています。善玉菌だけあればよいのではなく、それぞれの違う性質が共存し、競い合うことで役割りを果たしているのです。一方のウィルスは、ノロウィルス、インフルエンザウィルス、アデノウィルス、コロナウィルス、風疹ウィルスなどがあり、ポリオやおたふく風邪などを引き起こします。ウィルスの有用性はあまり聞きませんが、人類の遺伝子に作用して進化に影響したといわれています。真菌類にはカビ類や酵母菌があります。
多彩な菌のバランス
人間はこれらの多彩な菌とずっと昔から共存してきたのです。昔の子供たちは土のついた野菜を食べ、井戸水を飲んでいました。そこには生活習慣病もアトピーもアレルギーもありませんでした。土にはじつにさまざまな菌があり、幼児のうちに土を食べさせると抗体ができて病気にならないといわれていました。この時代は菌と人間がしあわせな共存関係にあったのです。皮ふや腸内の菌バランスが崩れると、体調を崩したり病気になったりします。納豆やヨーグルトやお酒の醸造には、菌の働きを利用しなければ作ることができません。
腸内環境の菌バランス
大切な常在菌と腸内環境
除菌アルコールで手を拭けば、たしかに病原菌はいなくなりますが、大切な表皮常在菌も皆殺しになります。表皮常在菌は人間の皮ふに住んでいて、病原菌などの外敵が体に入ってこないように身を守ってバリア機能を果たしています。その常在菌が殺傷されてしまうと、病原菌は人間の身体に容易に侵入してしまいます。さらに深刻なことは、免疫力を支える腸内細菌にも影響が及ぶことです。腸内には数百種類もの常在菌が棲んでいて、互いにバランスをとりながら病原菌に負けない体を支えています。外界の雑多な菌と触れ合うことで活性化しており、身の回りの菌を排除すれば腸内細菌も衰退してしまうのです。
清潔志向の行き過をどうするか
清潔志向が必要以上に加速した原因は、今回の新型コロナウィルスの影響が大きいのですが、もう一つはテレビなどのコマーシャルの影響があります。除菌グッズを販売する企業の広告が、手や台所、トイレなどにばい菌がうようよいて、健康を害するようなCMを見せ、映像のイメージで恐怖心を煽りたてているからです。それで人々は必要以上に神経質になっています。CMは商品を売るために菌を悪者に仕立てることで、「除菌」という付加価値を作りだしたわけです。その一方で、乳酸菌やビフィズス菌ばかりが持ち上げられ、単独の菌だけが純粋培養される傾向になっています。本当は自然界のバランスを絶妙に保った状態が好ましいのです。腸内環境についても同じことがいえます。清潔志向の行き過ぎが、かえって人間を弱くしています。この除菌習慣を乗り越えて、現代人は細菌とどう付き合えばよいか、よく考える機会にしたいものです。
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