ある調査によると、女性の8割強が成分に頼らない、肌本来の美肌力を引き出してくれる化粧品に期待し、なるべくシンプルなスキンケアを望んでいます。化粧品に期待することは、乾燥を防ぐことと、自立肌を実現することとなっています。健康な美肌を保つうえで、きわめて健全な考え方が反映されているといえます。ただ実際となると、理想と現実との間にかなりのギャップがありそうです。なぜなら、程度の差こそあれ、約8割もの女性が「自分は乾燥肌の部類だ」と答えているからです。このギャップはどうして生じているのでしょうか・・
化粧品に当てる望ましい金額をみると、月に1千円台、2千円台、3千円台とも、ほぼ同じ20%前後となっています。化粧品は品質と価格との幅が大きいので、いくらぐらいの金額をかけるかは、それぞれの事情で異なります。100円化粧品から高級化粧品に至るまで選択幅が大きいからです。必ずしも価格イコール品質とはいえませんが、しかし、肌本来の美肌力を引き出し、いわゆる「自立肌」をめざすには、ある程度のコストがかかることもたしかです。
自立肌とは、肌表面の皮脂膜、天然保湿因子(NMF)、細胞間脂質の三拍子が揃って、角質内に水分が十分に蓄えられ、バリア機能がきちんと機能している、ぷりぷりした透明感のある肌のことです。基底層で生成された表皮細胞は、有棘層、顆粒層と辿って角質層に至り、1~1.5ヵ月で垢になって剥がれ落ちる、規則正しいサイクルの肌のことです。正常な角質層の表面には皮脂膜があり、無数の表皮常在菌が棲みついて肌を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を防いでいます。つまり最前線で常在菌がしっかりバリア機能を果たしている状態です。
しかし自立した肌を維持するには、天然成分のオーガニック化粧品が必要になります。皮脂を取り過ぎずうるおいを保つには、刺激を極力取り除いた洗顔石けんで、常在菌を失わないことが大事です。洗浄力の強い石けんやケミカル成分のクレンジングでは、大切な皮脂を取りすぎて常在菌を削ぎ落とし、バリア機能を弱めてしまうからです。洗顔のあとはローションで水分を補い、蒸発を防ぐクリームでフタをします。このとき重要なことは、あくまでバリア機能を傷つけないことです。
ところがケミカル成分を使うと、常在菌が削ぎ落されたり死滅し、一掃されてしまいます。アルコールやケミカル成分にとても弱いのです。アトピーの肌には常在菌がいないといわれていますが、ステロイドなどの薬で生息できない環境になっているからです。常在菌は肌を健康に保つうえでとても重要な役割りをしています。またケミカル化粧品は、即効効果でぷりぷり肌をつくりだすために、潤い成分や美容成分を肌の中に送り込むのに、バリア機能が邪魔になり破壊しています。バリア機能が壊れると肌の水分はすぐに蒸発してしまうので、さすがにこのままでは困るわけです。そこで合成ポリマーを配合して、肌表面に薄いビニールの膜を形成し、乾燥を防いでいます。ビニールの膜で覆われた肌は、つるつるでピカピカしています。正常な皮脂分泌ができなくなり、ターンオーバーが乱れて、肌細胞の再生がスムーズにいかず、インナードライになります。つまり理想とする自立肌から遠のいてしまいます。なので自立肌を実現するには、どうしてもオーガニック化粧品が必要になるのです。
オーガニック化粧品は価格が高いというイメージがあります。これはケミカル化粧品とオーガニック化粧品の原料コストと生産工程の違いによって生じています。ケミカル化粧品に占める原料コストは、概ね5%前後といわれており、ちょっと信じがたいような話ですが、工場での大量生産が可能なことで実現しています。一方、オーガニック化粧品は、有用植物の種をまき、数カ月から半年もかけて生育を図り、ものによっては3,4年かかるものもあります。それを収穫してエキスを抽出し、製品化するまでに多くの時間と労力を必要とします。それが価格にはねかえるのです。ケミカル化粧品のようにそっくり販売価格に織り込むことはできません。どうしても販売価格は低く抑えざるを得ないのです。このため派手な広告宣伝などする余裕がありません。しかし消費者からすれば、それでも価格が高くなるので、肌によいと分かっていても手が出にくいということになります。
ケミカル化粧品は、安価で、短期的にはみずみずしくハリのある肌を演出してくれます。しかし長く使うことで、皮ふのタンパク質が徐々に溶かされて薄くなり、保湿力が低下し、乾燥肌に傾いていきます。抗酸化成分がないため、化粧品に頼らざるをえない肌になり、素肌は肌老化がすすみ、やがて酒さの発症にもつながります。その治療に使われるステロイドの副作用で、酒さ様皮膚炎になって悩む人が増えています。めざす自立肌とはほど遠い結果になっています。そうなると自立肌に戻すのも容易ではなく、落ち込んだり、長い時間とコストがかかり、簡単ではありません。そうなって苦しむより、早い段階で天然成分のオーガニック化粧品に切り替えて、自立肌のサイクルを整えることが賢明といえるでしょう。