慢性化しやすい酒さ
酒さという耳慣れない皮ふ疾患がふえています。お酒を飲んだときのように顔が赤くなり、痒みやヒリヒリ感、小さなブツブツができ、熱がこもるなどの症状があらわれます。とくに30代以降の女性に多く、皮膚科で処方される薬をぬっても一時的によくなるだけで、症状がくり返され、対応を誤ると思わぬ悪化を招くことがあります。原因不明で治療法が確立されていないため、重症化することもあり、治療方針を明確にして臨むことが大切になります。
治療とケアの目標をきめる
酒さの肌は、バリア機能が失われているため、乾燥しやすく、刺激に敏感で、アレルギーや炎症を起こしやすくなっています。改善するには、バリア機能を修復することを、治療やケアの目標にしなければなりません。炎症を抑えるために皮膚科の薬を使う場合も、ステロイドを長期使用すると後遺症の酒さ様皮膚炎に苦しむことにもなるので、なるべく短期使用にとどめることが肝要です。バリア機能の修復には、肌を刺激しない天然成分の化粧品でしっかりスキンケアをします。紫外線に当たると悪化の要因になるので対策が欠かせません。乾燥すると痒みが強くなるので、朝晩と決めてしまわず、こまめに水分補給をするようにします。
天然成分での保湿が不可欠
皮膚科にかかると保湿しないように指示されることがあります。一般の保湿化粧品は、油分や栄養分が酒さの悪化要因になりやすいからです。けれども乾燥を防いでバリア機能を取り戻すには、保湿は欠かすことができません。そこで、刺激のない天然成分でのスキンケアが必要になります。合成成分が使われていると悪化させるので、あくまで天然素材のシンプルなものにこだわることが大事です。保湿ができれば、肌が生まれ変わるターンオーバーを正常に導き、肌が本来もっている自然治癒力に働きかけて、時間はかかっても肌のバリア機能を徐々に取り戻すことができます。
バリア機能と常在菌の役割
正常なバリア機能は、皮脂膜、天然保湿因子(MNF)、角質細胞間脂質からなっています。しかし日常に使う化粧品にケミカル成分が含まれていると、これらのバリア機能が破壊され、水分が蒸発して乾燥しやすくなります。するとアレルギー物質などが侵入し、過剰な免疫反応が生じて、肌荒れや炎症を起こすようになります。また長い間にたんぱく質が溶かされて肌が薄くなり、水分をためる能力が低下して乾燥が強まり、毛細血管が透けてみえたり膨張して赤ら顔になります。
肌の表面には、無数の表皮常在菌が常駐していて、皮脂と汗を餌にして最上のクリームをつくり、肌を保護しています。また表皮常在菌は肌の表面を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑え、菌バランスを保っています。しかしケミカル成分で常在菌が一掃されてしまうと菌バランスが崩れて悪玉菌が増殖し、毛穴にトラブルを起こすようになります。すると一時的に薬で殺菌したり菌の活動を抑える必要もでてきますが、大事なことは肌の自然治癒力に働きかけてターンオーバーを正常に戻し、バリア機能を修復することです。それにはスキンケアによる保湿が欠かせないのです。
酒さのスキンケアの方法
ここで大事なことは、強いクレンジングや洗顔料で肌を刺激しないことです。洗顔石けんをぬるま湯でよく泡立て、その泡を押し付けるようにして汚れを浮かせ、湯をかけて洗い流します。洗顔で必要な皮脂をとりすぎると、皮脂が過剰分泌されて悪玉菌が増殖する原因になります。もし石けんが浸みるようであれば、米ぬかを木綿の袋に入れてぬるま湯に浸し、その汁で洗顔します。合成シャンプーの水が顔にかからないように注意することも大事です。化粧水は、殺菌作用のあるビタミンCを豊富に含むローズヒップエキスを配合したものが適しています。水の代わりに白樺樹液を使った化粧水なら、刺激なくすぐに肌に吸収されます。西洋ハーブが刺激になる場合は、肌を修復する作用のある黄からすうりエキスを配合したものがおすすめです。化粧水のあとはなるべく油分の少ないクリームをつけて保護します。みつろうやホホバオイルをベースにしたクリームなら、皮脂にちかいワックスエステルが主成分なので油焼けする心配もありません。
生活習慣全般を見直す
また日常の食べ物や睡眠、飲酒など、生活習慣の全般を見直す必要があります。白樺樹液を飲用すれば、体内から保湿でき、ターンオーバーに働きかけ、腸内環境を改善するので肌にも有効です。アルコール類は血中の水分を排出して乾燥を助長するのでよくありません。ほかにストレス、香辛料、食品添加物、熱い飲み物、寒暖の激しい環境、などを避けることも大事です。痒みがつよいときは、大根を薄切りして貼りつけることで緩和されます。
酒さは慢性化して症状が繰り返されやすく、完治に時間がかかる疾患です。とにかく肌に負担をかけないこと、刺激のない化粧品で乾燥を防ぎながら、根気よくスキンケアをつづけることがバリア機能の改善と修復につながります。