肌トラブルにかかわる活性酸素
美容において、シミ、しわ、ニキビの悪化など、ほとんどの肌トラブルには、活性酸素がかかわっています。美容植物の抗酸化成分には、これらの活性酸素を消去する力があり、肌トラブルや老化の予防に役立ちます。ところが合成のケミカル成分には抗酸化力がなく、一時的に保湿をできても、老化をとめたり、根本的に肌トラブルを抑える働きは期待できません。植物にはそれぞれ数十にのぼるフラボノイドやポリフェノールなどの抗酸化成分が含まれ、持続的にすぐれた美容効果を発揮します。
活性酸素を無害化する抗酸化力
活性酸素は、電子が欠けた不安定な酸素であり、体のなかの脂質やたんぱく質、糖類などから電子を奪いとって酸化させます。酸化とは肌をさびつかせ、老化させることです。この酸化をひき起こす引き金になるのが、紫外線、化粧品に含まれる化学物質、電子機器からの電磁波、ストレス、放射能などです。植物には、ビタミン類、タンニン類、フラボノイド類、芳香成分などの抗酸化成分があり、活性酸素を無害化して、若々しい美肌をたもつ働きをします。
フラボノイド類は、植物の黄色の色素にあり、その一種のタンニンは黄褐色をしています。カレンドラやオウバク、シコンなどの黄色や赤などの色素は、フラボノイドやポリフェノールの抗酸化成分です。植物の抗酸化成分のなかには、体内の酵素で消去できない活性酸素を消去してくれるものもあります。
ローズヒップのビタミンC、パルマローザやネロリの芳香成分ゲラニオールも、活性酸素を消去します。北海道にひろく分布する白樺の樹液も、スーパーオキシドラジカルアニオンという、活性酸素の元になる物質を消去することが実証されています。昔のひとびとは、生活の体験のなかから、老化を予防する植物をみつけてスキンケアに活用し、肌のシワやくすみを防いでいたのです。
“ビタミンC の爆弾”ともいわれるローズヒップ
抗酸化力を持つ植物たち
同じ植物でも、農薬や化学肥料をつかった植物には、抗酸化成分が多くありません。無農薬で有機肥料により栽培された野菜のほうが、味に深みと広がりがあるのと同じです。この点からも、化粧品成分に使われる植物は、健康な大地に育った、有機栽培のオーガニック植物であることに大きな意味があるのです。オーガニック化粧品によく使われる植物に、カンゾウ、ローマカミツレ、セージ、ローズマリー、スイカズラ、ヨモギ、ユーカリ、イチョウ、ソウハクヒなどがあります。植物エキスの成分は単体ではなく、複合的な抗酸化成分を含んでいます。このため、ひとつの植物が、保湿、くすみ予防、炎症抑制、肌の再生などさまざまな効果をあらわします。たとえばニンジンエキスには、活性酸素を抑えて、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進する働きがあります。またカンゾウエキスは、消炎作用のグリチルリチン酸やくすみを予防するグラブリジンなどの成分も含まれています。
ローズマリーの優れた抗酸化力
ローズマリーの抗酸化力はよく知られています。ヨーロッパでは、腐敗しやすい肉や魚の鮮度をたもつために使われてきました。ちなみにビタミン類は、抗酸化力を発揮すると変色しますが、ローズマリーは抗酸化力を発揮したあともほとんど変色しないという特徴があります。これはローズマリーにはいくつもの抗酸化成分が含まれていて、役割をおえた抗酸化成分を別の抗酸化成分が還元するためとされ、熱や光にたいしても安定していて作用をくり返すからです。このためオーガニック化粧品の防腐剤にもよく使われます。ローズマリーの成分のロスマノールは合成酸化防止剤のBHAよりも効力があるといわれています。これらは植物の抗酸化作用の一部で、ほかにも未解明の数多くの抗酸化成分があり、今後さらに発見がつづくと予想されます。
合成成分には抗酸化力が期待できない
いっぽう新開発の合成成分は、保湿、あるいは美白といった単一の目的で開発されており、複合的な成分による相互作用がないため、長期的に使用すると肌に負担がかかり、肌トラブルの原因になりかねません。化学的に合成された単一の成分を毎日のスキンケアに利用するのは、よいことずくめの説明と異なり、やはりリスクになります。こうした成分は、植物成分から単離されたり、凝縮されたり、また類似する成分を石油や糖類などから再合成してつくられています。
医薬品には副作用がありますが、医薬部外品として開発されたカネボウの美白成分が白斑被害を起こしたことは記憶に新しいところです。セラミドやコラーゲン、ヒアルロン酸などがもてはやされ、現代の美容がいかにも進歩しているようなイメージがありますが、実際には肌トラブルはなくならず、むしろふえる一方です。オーガニック植物による抗酸化力を生かした美容法こそ、自然の摂理に沿った素肌美のための、先人の知恵を生かした美容法といえます。