動物実験をめぐる世界の動向
新しい化粧品を開発するのに、動物実験が行われていることをご存知でしょうか。化粧品の実験なら動物たちもしあわせかも、といったイメージでしょうか。ところが現実は私たちの想像とちがって、動物たちには過酷きわまりないものです。このためEUなど欧米諸国では動物実験を禁止する動きがひろがっています。動物実験からうまれた化粧品は販売を禁止している国もあります。ところが日本では、こうした動物実験がほとんど報じられることはありません。消費者も知らないままその化粧品を使っています。では動物実験のなにが問題なのでしょうか。
日本では報じられない理由
メーカーは「ちゃんと安全性テストをしているから安心」といいいます。消費者は毒性テストがクリアされているなら安心だと思っています。その裏で、たくさんの動物たちが犠牲になっているのです。
欧米では「美しさのために動物を犠牲にしたくない」という消費者の声が高まり、動物実験からうまれた化粧品は支持が得られなくなっています。ところが日本では動物実験について報じられることがほとんどありません。化粧品会社の多くが、化粧品を開発するのに動物実験を行っているのにです。なぜなら、そうした化粧品をつくっているメーカーが、TVや女性雑誌、新聞広告の大きなスポンサーになっているからです。メディアは動物実験について口をつぐんでいます。
動物実験の実態
どんな動物実験が行われていると思われるでしょうか。動物実験という言葉からは実感がピンとこないかもしれません。じつは化粧品の動物実験は、動物たちにとって、過酷きわまりないものなのです。実験の種類には、眼刺激性試験、皮ふ刺激性試験のほか、半数が死ぬ致死量を調べる急性毒性試験があります。眼刺激性試験ひとつを例にとると、目に入ったときの刺激を調べるため、うさぎやモルモットの目にスポイトで成分をいれ、目がつぶれていくようすを調べるのです。うさぎが手や足で目をこすったり、痛みで暴れたりしないように、首から頭だけだして固定する箱に入れて、3~4日も苦痛に晒されます。ウサギはひどい目にあっても鳴き声をあげない動物なので、都合がよいのだそうです。
また紫外線のUVテストでは、犬が毛を剃られて成分をぬりつけられ、2~5週間にもわたり紫外線を照射しつづけ、皮ふの変化をみるのです。そして実験が終われば、みんな殺処分されます。その生々しい写真は、あまりに残酷なのでお目にかけられません。大小をふくめて1000社もある化粧品会社の多くで動物実験が行われていて、消費者はなにも知らずにその化粧品を顔につけています。動物と人間では生理的に大きな違いがあり、動物の個体ごとにも試験結果にばらつきができるため、信頼性に欠けるという批判もあります。最近では、動物実験をしないと宣言したり、動物実験をした化粧品は輸入しないとする会社もでてきました。しかし発展途上国などまだ動物実験がとりざたされていない国へ輸出するケースもあるといいます。
化学成分には必ず毒性がある
美しい女性がうっとりするような広告のイメージとは裏腹に、かくも過酷な動物の犠牲のうえにできあがる化粧品で、はたして身も心もきれいになれるものでしょうか。化学成分には必ず毒性があり、厚生労働省は化粧品に配合できる量をきびしく定めています。とくに美白などの医薬部外品(薬用化粧品)では実験が義務付けられています。しかし短い期間の動物実験で安全とされるケミカル成分が、5年、10年と長いあいだ肌に蓄積したとき、肌にどんな影響を与えるか保証はありません。乾燥肌や敏感肌の原因になっているとの指摘もありますが、人間が実際に使用して人体実験で確かめるしかないのが現状です。
新しい安全性テストの方法
動物実験をしない場合の安全性テストは、培養した細胞や人工皮ふを使ったり、植物から抽出したタンパク質を使うなどしておこなわれ、コンビュータで解析する方法がとられています。動物実験をなくしていくには、消費者が動物実験をしているメーカーの化粧品は買わないことがいちばんです。
何世紀も人間が使いつづけて安全性を確認し、子々孫々に伝えてきた天然成分からつくらる化粧品にまさるものはありません。ハーブエキスや天然成分100%のオーガニック化粧品こそ、肌も心もうつくしくなれる化粧品であることを再認識したいものです。