香りは自律神経やホルモンに作用する
化粧品を選ぶとき、香りには人それぞれ好みがあります。香りは自分の好みだけで選べばよいと考えている人が多いと思います。ただ香り成分には、鼻の嗅神経をとおして大脳辺縁系につたわり、自律神経やホルモン、さらに免疫系の働きをコントロールする視床下部をとおして心身に大きな影響を与えることがわかっています。香りは気分をリラックスさせるなど、健康や美容にも作用することから、香りについて知っておくことが大事です。
合成の香りはホルモンバランスを崩す
香りは化粧品を選ぶときの大事な要素のひとつです。香りのもとになるのは、植物から抽出される天然成分と、石油からつくられる合成成分があります。香料はシャンプーや洗剤、柔軟剤、歯みがきなど日用品にも使われ、一般的な日用品にはコストの安い合成香料が使われます。化粧品のパッケージの成分に「香料」とだけ書かれていれば、合成成分の可能性が高くなります。天然成分の香料には薬効や美容効果があるので、オーガニック化粧品では「ラベンダー油」「ローズマリー油」「ダマスクバラ花油」など、そのまま名前が記載されることが多いからです。
デパートの化粧品売り場に近づくと、あたりにつよい香りがただよい、頭が痛くなったり、気分が悪くなったりといった経験はないでしょうか。それは香りが鼻から吸収されて、神経系を刺激するためです。合成の香りには、嗅覚をマヒさせ、神経をおかしたり、アレルギーやアトピーの原因になり、体のホルモンバランスを崩すなどの影響をおよぼす可能性があります。しかし市販の多くの化粧品には、合成香料が使われたり、合成香料をブレンドしたものが使われるのが一般的です。
天然成分の香りの作用
天然の香りには、ホルモンバランスを整え、免疫力を高める作用があります。その香りは、植物の茎、花、種子、葉、樹皮などの部位から精油(=エッセンシャルオイル)として抽出することで得られます。肌荒れを抑えたり、ターンオーバーを促し、若返りを促進するなどの作用があり、また精神をリフレッシュしたり、リラックスさせるなどの効果もあります。クレオパトラ床やはお風呂にバラの香りを浮かべて心身をリフレッシュしたといわれています。最近では認知症の改善に役立つとして臨床研究もすすめられています。このほか天然の香りには、覚醒・沈静効果、疲労の回復、ストレス緩和、睡眠改善、皮ふ状態の改善、免疫系への効果、痩身効果などがあることが確認されています。目に見えない香りにも、心身に与えるさまざまな働きがあります。
精油と植物油のちがい
天然の香料は精油とよばれますが、サラダ油やオリーブ油のような植物油とはまったく構造が違っています。精油はべたつかず、サラサラした水のような液体で、たくさんの芳香分子が集まった、揮発性の高い有機化合物です。水蒸気で植物から精油を抽出するとき、芳香成分は水蒸気でコロイド化してアルコールに近いものになります。蒸気が冷えると比重の軽い精油は上の層にたまり、植物油は重いので下の層に分離します。この下の植物油がフローラルウォーターと呼ばれるものです。精油はほとんどの場合、原液のままでは強すぎるので、植物油で希釈して使います。希釈する植物油には、ホホバ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油などがあります。またいろいろな種類の精油をブレンドして調合することで、さまざまな香りを作りだすことができます。
香りとオーガニックコスメ
精油の粒子はとても小さく、体内にはいると毛細血管にながれこみ、血液にまじって体内の臓器に運ばれ、健康や美容に作用します。この効果を利用して、精油を使った自然療法として芳香療法(アロマテラピー)が確立されており、若い女性を中心に人気をあつめています。天然の香りでリラックスしてストレスを取り除けば、体内の活性酸素の発生を抑えることができ、肌荒れやくすみの予防につながります。またホルモンバランスの乱れを整えることで、生理不順や肌荒れから守ることにもなります。天然の香り成分が配合されたオーガニックコスメを選ぶことで、外側からのケアだけでなく、香りによる効果からも美肌づくりを助けることになるのではないでしょうか。