石けんと合成液体シャンプーの違い
スキンケアはまず洗うことから始まります。もっとも大切なお肌の土台作りになります。そのあと化粧水やクリームの手順なのですが、この出発点を誤ると、乾燥肌や肌トラブルにつながりやすく、とくに乾燥などの肌トラブルがある場合にはいっそう進行させてしまいかねません。ところが普段はあまり意識することが少なく、ひどい敏感肌でもないかぎりつい軽く考えてしまいがちではないでしょうか。
洗顔の洗浄剤には石けん(固形石けんと液体せっけん)と合成液体シャンプーがあります。どちらも洗う、皮ふについた汚れを落とすという意味では同じなのですが、皮ふに及ぼす影響となると大きな違いがあります。石けんは皮ふの汚れや皮脂を適度に洗いながし、皮脂を取り過ぎることはありません。しかし、合成液体シャンプーは、皮脂を根こそぎ奪い取って洗い流してしまいます。皮脂は皮ふの表面を覆って皮脂膜を形成し、外から有害物質やアレルギー物質が肌に侵入しないようにガードしている大事なものなのです。
肌バリアの皮脂におよぼす影響
石けんは安全な洗浄成分として、人類が5000年も昔から使ってきたものです。水酸化ナトリウムと動植物オイルで固形石けん、水酸化カリウムと動植物オイルで液体石けんができます。人の肌は弱酸性ですから、石けんのアルカリが肌に触れて洗浄の役目を果たすと、すぐに中和されて泡が消え、急速に活性を失います。一方の合成液体シャンプーは石油を原料につくられた強い洗浄成分の合成界面活性剤が使われます。合成界面活性剤は洗浄力が強いことに加えて、皮ふに残って洗浄力を失わず、泡がいつまでも消えません。そして必要な皮脂や表皮常在菌までそぎ落として洗い流してしまいます。
石けんを使った後では、お風呂から上がると水分が皮ふの表面で丸い玉になって転がりますが、これは肌に皮脂が残っている証拠です。合成洗浄シャンプーで洗った肌は、水分が玉にならず平らに張りついているはずです。これは洗った後の皮脂の状態を表わしています。
生物多様性や自然環境への影響
石けんは洗面台やお風呂から下水や河川に流れ込んでも、すぐに分解されて、石けんかすは魚のエサになるほど安全なものです。一方の合成液体シャンプーは容易に分解しないため、生物多様性に悪影響をあたえ、環境汚染や自然破壊につながります。琵琶湖や千葉県の手賀沼の汚染が深刻化したとき、石けん運動によって浄化されたことはよく知られているとおりです。石けんは人体にとっても自然環境にとってもやさしく安全な洗浄剤なのです。
石けんは基本的にすべてアルカリ性であり、アルカリ性でない石けんはありません。肌にやさしいと謳われる酸性石けんやアミノ酸石けんと呼ばれる洗浄剤は、合成界面活性剤を添加しなければ作ることができません。合成界面活性剤は洗い流ししても肌に残って、皮脂や角質細胞間脂質を流出しつづけ、乾燥肌や肌荒れを進行させます。一時的に肌にやさしく思われても、細胞自体にダメージを与える可能性が強いのです。
植物エキスに配合される要注意成分
オイルシャンプーや植物エキスがたくさん配合された自然派と称する洗浄剤でも、デヒドロ硫酸ナトリウム、グレープフルーツ種子エキス、ラウレス硫酸ナトリウムなどの成分の記載があれば、十分に注意する必要があります。合成界面活性剤は皮ふに付着しやすく、皮ふを覆い、保湿性もあってしっとりした感触をもたらすので、なんとなく肌によい印象を与えるかもしれません。だからといって皮ふに良いわけではなく、化学成分が肌のバリア機能をじわじわと壊しつづけます。石けんでも顔が洗えないというほど弱肌の人は、合成界面活性剤の製品を使いすぎた結果で、肌のバリア機能が壊れているのです。早急に石けんに切り替えたほうがよいと思います。
肌トラブルの改善には、保湿化粧品や保湿クリームを使う前に、まず肌の土台づくりとなる洗浄方法を見直すことが先決となります。肌荒れがひどい場合には、1週間とか半月とか、しばらく何もつけない肌断食という選択肢もあります。合成の洗浄成分が入った合成液体シャンプーはただちに中止し、オーガニックな石けん使用に切り替えることが賢明です。