石けんは天然の界面活性剤
本当に安心できるオーガニックコスメにとって、界面活性剤をどう扱うかは大きな問題です。界面活性剤とは、水と油のように本来は混じり合わないものを、混ぜあわせる働きをします。オーガニックコスメをつくるうえで、乳化剤や洗浄成分となる界面活性剤に何を使うかはもっとも難しい問題です。洗顔料やシャンプーの洗浄成分として、また乳液やクリームの乳化成分として、なくてはならない成分だからです。
もっとも歴史のある天然の界面活性剤として石けんがあり、オーガニックコスメと石けんは切っても切れない関係にあります。石けんは5000年も昔から、人体にも環境にも害のない成分として知られ、世界中でひろく利用されてきました。最近の安全性の高い石けんは、洗浄アイテムとしてだけでなく、オーガニックなクリームの乳化剤としても用いられます。
石けんは油脂とアルカリ成分の水酸化ナトリウムなどを混ぜあわせて加熱すると、家庭でも簡単に作ることができます。その原理は5000年前とほとんど変わりません。油脂は牛脂や豚の脂などの動物油、大豆、パーム油、オリーブ油などの植物油を問わず、どんな油脂からでも作れます。油脂の種類によって使い心地の異なる石けんができます。一般的には半製品の脂肪酸ナトリウム、または脂肪酸カリウムが原料に使われます。これらだけが、原料名に「石けん素地」と表記されます。
代用品として登場した合成界面活性剤
しかし1940年代に、石けんの代用品として石油から作られた合成界面活性剤が登場します。コストも格段に安くできるため、化粧品にひろくつかわれるようになっていきました。近年ではケミカルコスメだけでなく、多くの無添加、自然派コスメにも、植物などの天然成分に混ぜて、合成界面活性剤が使われるケースが多々あります。それほど合成界面活性剤は使いやすく便利なものなのです。いまやその種類は2000種類にものぼっています。ただ問題なのは、合成界面活性剤は肌の奥深く浸透し、長く残留して肌の機能を破壊しつづけ、乾燥肌や敏感肌の大きな原因になることです。家庭排水から環境中に流れ出れば、水の生態系を壊して水汚染の原因になります。中には環境ホルモンの疑いがもたれているものも少なくありません。
一方の石けんは、河川に流れ出てもすぐに分解するので、水汚染や環境汚染を引き起こす心配がありません。石けんカスは常在菌や魚のエサにもなります。
本物の石けんはすべてアルカリ性
アルカリ成分に苛性ソーダを使うと、副産物で保湿効果の高いグリセリンができ、そのまま固めると肌がつっぱらない石けんができます。しかし水分を吸収しやすく、解けやすいという欠点があります。1か月間ほど手間をかけて寝かせ陰干しすることで、固くて刺激の少ない質の高い石けんをつくる技術も生まれています。しかし食塩を加えてグリセリンを取り除き、上澄みの純石けんだけを取り出して固めてつくられる石けんが一般的です。
苛性ソーダの代わりに苛性カリ(水酸化カリウム)を加えて作ると、液体状になりやすいので、「石けんシャンプー」になります。
石けんはすべてアルカリ性です。石けんは弱酸性の皮ふに触れると中和されて石けんカスをつくり、洗浄力を失って役目を終えます。弱酸性石けんやアミノ酸系石けん、複合石けんなどは、合成界面活性剤が使わなければできない洗浄力の強い合成洗剤なので、注意が必要です。合成界面活性剤は皮ふに残って皮脂を奪いつづけ、乾燥肌の原因になるからです。