お肌の間違った常識
間違った常識でも、それが世間でまかり通っている場合、それを覆すことはむずかしいものです。お肌に関する常識もそのひとつです。クリームや乳液は肌の美しさを保つために、肌にすり込んで肌の奥に浸透させるもの、というのはごく普通の常識ですね。
ところが肌の仕組みは、外から何かを入ることを固く拒み(バリア機能)、逆に排出する方向に働いています。表皮の基底層で生まれた皮ふの細胞は、皮ふの表面に向かって押しあげられ、最後は垢になってはがれ落ちます。「肌は排泄機関である」と言った人がいました。ちょっと抵抗感のある言葉ですが、じつはこれは正しい常識なんです。
肌の細胞は外に向かって排出される
バリア機能とは何か、もう一度ふり返ってみましょう。皮ふは28日(+30歳からの年齢の日数)で新陳代謝を繰り返し、つねに新しく入れ替わっています。これをターンオーバーと呼んでいます。基底層で生み出された表皮細胞は、有棘層、顆粒層、角質層と形を変えながら外に向かって、最後は細胞が核を失って使命を終えると、垢になってはがれ落ちます。つまり外から異物が侵入しないように固く守る一方、細胞は外に向かって排出されていくのです。つまり化粧品の常識とは異なった方向へ動いています。
バリア機能の仕組み
では外部からの侵入を拒むバリア機能とは、どういう仕組みなのでしょうか。じつはこの仕組みのおかげで、人は海に入ったりお風呂に入っても水ぶくれにならないですむのです。まず肌の表面には皮脂膜があり、これが水をはじいて侵入を防ぐ第一関門になっています。その下の角質層には、油と水の層が幾重にも交互に重なる細胞間脂質というものがあり、これによって油も水も通さない仕組みになっています。また角層は化学物質と結合することでその侵入を阻止します。ランゲルハンス細胞は表皮内を自由に動き回って異物を監視し、侵入をみつけると情報を伝達して免疫機能に働きかけます。顆粒層にある油は水溶性物質の侵入をはねつけます。そして基底層はすべての物質を真皮の中に入れないようにガードしています。このように四重、五重のきわめて固いバリアを形成して、皮ふは外界から異物が侵入するのを阻止しているのです。
合成界面活性剤がバリア機能を壊す
これだとどんなに優れた美容成分でも皮ふの中に入ることはできません。そこで普通の化粧品では、美容成分を肌の奥に送り込むために、この強固なバリア機能を何とかして突破しなければなりません。そのために使われるのが合成界面活性剤です。界面活性剤とは、本来は混じり合わない水と油を混ぜあわせる性質をもっています。つまりバリア機能を溶かして無力化してしまい、そのすきに美容成分を肌の中に送り込むのです。
皮ふの仕組みが壊れると
すると肌は美容成分の作用で一時的に潤ったり艶やかになったりしますが、バリア機能が失われてしまった結果として、細菌やアレルギー物質などもやすやすと肌に侵入してしまいます。また肌の内部で肌を潤している水分が蒸発しやすくなります。さらに悪いことに、肌の新陳代謝をつかさどるターンオーバーが狂っていき、未成熟な皮ふを完成させるため薄くなっていき、水分をためる能力が落ちてしまいます。皮ふはしだいに弾力を失い、シミやくすみ、しわや肌老化を早めていきます。これが乾燥肌や肌トラブルを作り出すもっとも大きな要因です。肌本来の機能に逆行してバリア機能を壊してしまった代償といえます。
皮ふの働きを助ける化粧品を
こうなった皮ふを元に戻すには、肌の構造を壊す化粧品の使用をすぐに中止し、肌を傷めない安全な化粧品に切り替えることが肝要です。それには石油から合成される化学成分を含まない、植物や天然の原料からつくられたオーガニック化粧品がもっとも適しています。このオーガニック化粧品なら、傷んだ肌を癒しながら、じっくりと修復していきます。
植物はさまざまな薬効や作用をもっていますが、薬剤のような急激な作用をしないので即効性は期待できません。肌を傷めないように、ゆっくりじっくり、しかし確実に、肌本来のしくみや本来の働きを活性化させていきます。すると肌はしだいに本来の潤いと輝きを取り戻していきます。30代、40代を過ぎて肌がぼろぼろになってから気づくより、肌の仕組みをよく知って、肌のためになるスキンケアを心掛けたいものですね。手遅れにならないうちに、間違った化粧品の常識を改めることで、年齢を重ねても世界の人からうらやまれるような日本女性の美肌を保つことが可能になるのです。